AGE of NOVO インドネシア マンデリン リントン トゥルーブルー
AGE of NOVO STORY
インドネシア マンデリン リントン トゥルーブルー 生産者情報

6年ほど前、Sさんという東京でゴンゴンに幅を利かしている、高名なデザイナー氏とお仕事をしたことがある。
普段、奇天烈なファッションで周囲からケチョンケチョンの私など、デザインの何たるかを極めた氏には、羽虫のような存在であったろう。あまり相手にされてなかった気がするが、S氏のおしゃれオフィスで、一度だけ褒められたことがある。
「中小路さん、この前飲ませてもらったあの珈琲、今まで飲んだ中で一番うまかった。」
故・深作欣二ばりにドスの効いた声にしびれまくった。そのコーヒーの名前は、マンデリンの「TRUE BLUE」という。
「マンデリンのトップスペシャルティを復活させましょう。」

時は2020年、熱く仰っているのは、当ブランドサイトでは頻出のインポーターの広池氏。世界三位のスイスのコーヒー専門商社「Volcafe」(以下ボルカフェ)の日本法人の社長。
そう、「TRUE BLUE」はボルカフェがプロデュースしている逸品。インドネシアのスマトラ島、リントン地区のマンデリン。

同じくボルカフェの「ブルーバタック」というこれまた同エリアで大人気の銘柄と並びつつ、特にリントンの特徴が強いものを「TRUE BLUE」として販売されている。
しかし4年ほど前、インドネシアの経済成長とともに、農村での人手不足等から品質が落ちてきたとされたころ、このリントン地区でも一時、良い品質のものが取れなくなり「TRUE BLUE」というにはイマイチ、という情報から、弊社では少し間があいた。
その間はオランダ系のインポーター経由で、同じリントンの違う銘柄を採用。
そして1年が経ったころ、スイス系ボルカフェの逆襲が始まった。
広池氏いわく、これぞ「TRUE BLUE」という銘柄をダイイチデンシだけにご用意するので、弊社オリジナルロット「AGE of NOVO」にも採用してほしいというわけだ。
「TRUE BLUE」を作るためには、その分母となるブルーバタックの品質をあげる必要がある。

トバ湖という世界最大のカルデラ湖の南の山あいが、広池氏いわく、ものすごく良い土。そのあたりの高地に昔から住むバタック族が中心になって作る珈琲、それがブルーバタック。
バタック族を調べてみた。
インドネシア,スマトラ島北部、トバ湖周辺の高地に住むプロト・マレー系先住民。人口約 300万人。特徴として誇りが高く、ものすごく気性が荒い、とある。
画像検索すると、なるほど、気性は荒そうだ。

広池氏に聞いてみる。「そうなんです、このあたりの農園とは直接コンタクトをすることすら、実はとても難しいんです。」
スマトラマンデリンの「リントン」といえば世界的にも超がつくほどの名産地。そして、日本でもモカ、キリマンジャロ、マンデリン、ベスト3に入る大人気銘柄のトップ産地。珈琲好きで、マンデリンと聞いて知らない人はまずいないだろう。そのニーズの割に、本物のリントンは特に確保が非常に難しい、インポーター泣かせの産地と言われる。

話を聞き進めると、驚くべきことに、仲介業者の立ち合いがないと、農園を見せてもらえないことがほとんど、と言われる。
通常は農園に行き、コーヒーの木やチェリー、生豆だけでなく、そこの設備や農園主の人柄をみて、契約するのが生豆専門商社のスタンダード。
そこまで見ると、一年だけ味が良いのではなく、長く良い豆を作るクオリティ、信頼を築いてビジネスができる相手かどうか、判断できる。
そういえば、私たち製造業の現場でも、大手の会社さんが下請け工場を探しに、工場見学に来られることもある。
弊社ダイイチデンシにも超有名な大手メーカーが何回か来られたが、社長の気性がバタック族ばりに荒く、下請け工場にはなれなかった。
しかし、あの時に大手の下請けになっていたら、きっと今は自社製品を持つ焙煎機メーカーにはなっていなかっただろう・・・。
話を戻そう。

そう、このリントン周辺もそんな小さな零細農家、誇り高く、気性の荒い農家さんが多いようで、外国人のインポーターが易々と農園を見せてもらうことはできず、コレクターとも呼ばれる、リントンのローカルの集買人が彼らの農園の豆を選別し、購入。そこからボルカフェは購入する。

マンデリンは、スマトラ式という世界的にも特殊な精製を行うことで有名。
収穫された豆は各零細農家で、果肉をはがし、発酵させ、水洗い、ミューシレージといわれるヌルヌルした液体も除去した、いわゆるパーチメントを一次乾燥。
この時の水分値が40%ほどのものを「GABAH(ガバ)」と呼ぶ。

農家はそのGABAHをガバっとおよそ週一で開かれる地域の市場に持ち込んだり、コレクターと呼ばれる集買業者に直接販売する。
彼らは豊洲市場の仲買人みたいなもので、その目利きと各農家さんとの信頼関係をもつことがとても重要だ。
「実は最近、長年付き合えると思える、本当に素晴らしい集買人と出会ったんです。彼の目利きと品質管理で、まずはブルーバタックの品質をあげて、その中から、本当にこれはリントンだなぁという独特のものをTRUE BLUEとして、貴社のオリジナルロット用にと計画しています。」
普段は山科に潜伏中の大石内蔵助のように、昼行燈(あんどん)風味な広池氏、が、その時は珍しく、その鼻息はMAX。
しかも相当苦労するというリントンにトライされるという、そのモチベーションを聞いてみた。弊社がオランダの商社に浮気していることも関係しているのかもしれない、と。
「いや、このリントンの珈琲が本当に美味しいからです。絶対にNOVOのオーナーさんにも満足してもらいたい。難しい土地ですが、本当に良い土。ポテンシャルは折り紙付きです、良い豆を絶対にご用意します。」
こうしてスイスVSオランダのユーロ対決が始まった。カギを握るのは、集買業者との信頼関係の構築。

1年後。ついに、その豆はやってきた。
ブルーバタックのサンプル。そして、リントンスーパーグレード 「TRUE BLUE」と大書されたプレシップメント、輸出前の現地から送られてきた確認のための生豆サンプル。

ブルーバタックからいただくと、苦さと甘さの絶妙なバランス、パーフェクトな味わい。この時点でスイスの圧勝は確定した。
そしてTRUE BLUE。美味し過ぎる!まさに美味しいが、五感をスムースに通り過ぎていった。バタック族の誇りと、トバ湖の雄大さがMIXしたような、まさにマンデリンの最高峰、そんな逸品であった。
早速、電話をする。「いやー、集買人の結婚式に、花まで出しましたからね」と、広池氏は変な自慢。
そう、コロナ禍の中でも信頼関係を保ち、最も難しい産地とされるリントンより、素晴らしい逸品のルートを再び手に入れた会社の社長の声には、インポーターとしての誇りがつまっていた。
そしてビジネスの話。
まずはブルーバタックを相当数ご契約する。そしていよいよTRUE BLUE。NOVOのオリジナルブランドで、オリジナルデザインの袋、当然全数買うとオーダー。
「はい、もう67袋全数買ってください!」と広池氏。「え?」と思わず聞き返す。「いや、200-300袋ぐらい全然買いますよ」と。
NOVOオーナーさんは今や全国で350店舗を超える、その専用ロット。
いくら5kg単位で麻袋から小分けして販売もするといっても、ちょっと少ない印象だ。そして、ボルカフェでも、せっかく苦労して発掘されたルートの豆、そんな少量で良いのかと。
「いや、ブルーバタックの中から、本当にこれはリントンだなぁという独特のものをTRUE BLUEとして選んだんです。だから、そんなにいっぱい獲れないですよ。
あ、そうか、うーん、そうですね、もうちょっと妥協したらよかったですかね…実は我々としても、量が少ないと、そんなに儲けられないということですよね。」
信じられないことに、広池氏は美味しい珈琲を追いすぎて、ビジネスの美味しさまでは、さほど重要視されてなかったようだ。社長なのに。
「AGE of NOVOシリーズはそんなに高くないトップスペシャルティが売りでしょうし、まぁこれぐらいでどうでしょう?」
オファーされた価格もトップオブトップのスペシャルティの割には安かった。
もちろん全数、すぐにご契約したのは言うまでもない。

「ものすごく頑張ってもらったのに、あまり良い商売でなくて、すみません」と私。
「いえいえ、まぁ来季はもう少し量をとれるように頑張ります。今年はそうですね、TRUE BLUEだけに、もうマジブルー、なんちゃって。ではまた。」と、電話は切れた。ギャグセンスは、安定のコモデティクラス。
その後、品質が格段にあがったブルーバタックの契約数をさらに増やして、そちらの新豆を先にラインナップ。
諸事情で入港が遅れたTRUE BLUEは今回、数は少ないながらも、無事この度、NOVOオーナー様限定での復活のリリースとなった。

そういえば、TRUE BLUEってどういう意味だろうか、まさか、マジブルーではないだろう。
4半世紀ほど前に、一世風靡したLUNASEAというバンドのヒット曲にもあった。調べてみる。
TRUE BLUEの意味は、「忠実、信頼」とあった。
約束通り、最も難しいエリアから、唸るほど良い豆をGETし、さほど利益を乗せず、とっておきを売ってくれたスイスの日本法人の社長。
海千山千の商社マンは、会議室での横文字のプレゼン資料ではなく、現地にも出向き、人と人で向き合って語るという。
独特の精製方法から傷がつきやすいはずのマンデリンとは思えないほど、キラキラ光る宝石のようなコーヒーの生豆に、信頼こそが、コーヒービジネスで一番大切だと、そんな矜持を見た気がする。
文:中小路通(ダイイチデンシInc)
取材ご協力:広池社長(ボルカフェ)

